「裏ワザ」は原理を把握しないこともあるけれど

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あけましておめでとうございます。三が日も終わりましたね。そして、はじめまして。
昨年4月に入部した、2回生のひとしと申します。よろしくおねがいします。Hijicho内では「タメ系」とも呼ばれています。なぜ「タメ系」なのかを知りたければ、一度僕と話をしてみましょう。たぶんわかると思います。

 

さて、僕は最近、といってもこの年末年始なのですが、地元某所(府外)で連勤の続くアルバイトに勤しんでおります。古本屋さんです。この時期は多くのお客さんが中古本の買い取りを申し込むため忙しいのですが、そのぶんやりがいはあります。貴重な「稼ぎどき」ですしね。

アルバイトをしていると、その種類によるのかもしれませんが、一種の専門性のようなものが身につくこともあります。技術であったり、クセであったり。たとえば僕のように古本屋に勤めていますと、「査定」の必要上から、実際の本を手にしたときに、ワレ(本を開いた時に、ページとページのすき間から、背表紙の裏側が見えてしまう状態)やシミ、ページの折れなどに敏感になってきます。この記事の読者の皆さまにも、古本屋ではなくても、そういう「専門性」みたいな経験はあるかと思います。

そしてこの「専門性」には、生活の知恵のようなものも含まれます。むかし、テレビ番組で「裏ワザ」を紹介するものがありましたが、あんな感じです。これも古本屋の例から紹介しましょう。

 

古本屋で本を購入すると、そこが立ち読み可の店舗であった場合、その本が透明なポリプロピレンの袋に入れられていないことがあります。これは店舗で内容を確認できる点では良いかもしれません。しかしその場合、中古本の表紙にそのまま値札が付けられることになります。本を家に置いておきたい身としては、値札のシールが付いたままっていうのは、ちょっと気持ちよくないですよね。

この値札を剥がしたいとき、普通にシール剥がしを使っても良いのですが、ちょっとした小技があります。それが、オイルライターのオイルです。これを目標のシールに数滴垂らし、少し時間を経過させると、なんと値札シールが剥がれやすくなるのです。原理は、よくわかりません。あとはカッターナイフなどの道具を使って剥がしてしまいましょう。

(もちろんこのオイルは、本来オイルライターのために使用するものです。実際はシール剥がしを用いるのが理想的なのですが、どうしても用意できない、といった場合には手助けとなるでしょう。)

 

ところで、上の「原理は、よくわかりません」というのは、重要です。というのも、それはこの「裏ワザ」が、体系的な知識によらないものであるからです。ここでいう「原理」とはおそらく、化学反応のことだと思います。僕は化学については、義務教育で少し習ったのち、高校ではほとんど学ばなかったため、詳しくありません。現在も、化学とはほとんど縁がありません。しかし化学について詳しくなくとも、その応用を、このようにして使用することができます。

Hijichoのメンバーも含む私たち大学生は、自然科学、社会科学などといった違いはあっても、それぞれ「学問」というひとつの体系的な知識を学びます。ところがこのような学問というものは、原理を説明する場面では有効ですが、それが必ずしも一般の、学問とあまり縁がない人びとの生活場面には行き届かないことも多いです。先ほどの「オイルライターのオイル」の例でもわかるように、化学反応についての知識と、「裏ワザ」とは、片方だけ知っているということもありえます。つまりここで言いたいのは、「原理を知っていること」と「知識を応用できること」とは別物である、ということです。もちろん「原理を知ってい」れば、「応用」しやすくなるのかもしれません。しかし強調しておきたいことは、原理を知っていることが必ずしも応用につながらないということ、そして「原理を知らなくとも」応用はできるということです。

 

さて、アルバイトというのは多くの場合、学問ではないと思います。そして学問ではないものというのは、なにもアルバイトに限った話ではありません。いわゆる「現場」における技術や知識、つまり「原理」から離れた、文脈に依存した技術や知識はすべて、ここでいう「裏ワザ」的な性質があるのではないでしょうか。これは「ノウハウ」と言い換えることもできるかもしれません。一部で「学校(大学)で学ぶことは、何の役にも立たない」というような主張を見かけることがありますが、このような主張は、「裏ワザ」「ノウハウ」が、「現場」においてある程度重要な役割を果たしている、ということを示していると考えることもできるでしょう。

このように、「裏ワザ」は、学問のように原理を把握しているわけではないけれど、「現場」や生活の場面において一定の価値をもっています。だとすれば、そのような「裏ワザ」を私たちは軽視するわけにはいかないでしょう。とりわけ、学問を専門的に学ぶいっぽうで、その多くが将来、就職という形で「現場」を経験する学生は、いっそうそのことに注意しなければならない。上でも触れましたが、学問は原理を、「裏ワザ」は原理だけでは対応できない部分をそれぞれ担っています。どちらにも偏るのでもなく、両方ともそれぞれ大切であることを、把握しておくべきであると、僕は思います。

 

僕は現在Hijichoにおいて、学術情報を伝える「学術デスク(デスク2)」に所属しています。いまいち業務をこなせていませんが。しかし学術情報を伝えるからといって、それ以外のものを軽んじて良いわけではありません。今後は、今回取り上げた「裏ワザ」のような観点も活かせるように、工夫を凝らせれば、と思います。

 

文責

山中仁志(Hijicho)

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